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複数就業者の労災保険給付

 複数の事業所で雇用される方の労災保険給付については、一昨年(2020年)9月の労働者災害補償保険法改正で法制化されています。

 対象となる「複数事業労働者」は、 負傷したり、疾病となった時点で、事業主が異なる複数の事業場に雇用されている方に限らず、
 〇 一の事業場に雇用され、他の就業について特別加入している方
 〇 複数の就業について特別加入をしている方
が含まれます。


 特別加入の対象は、昨年2度にわたって拡大され、柔道整復師、創業支援等措置に基づく高年齢者(以上、一人親方その他の自営業者等)や、監督や俳優などの芸能関係作業従事者、アニメーション制作作業従事者、ITフリーランス(以上、特定作業従事者)が加えられています

 労災保険での給付のうち金銭での給付額の算定に用いる「給付基礎日額」について、複数業務労働者の労働災害では非災害発生事業所(労働災害が発生した事業場以外の事業場)も含めたすべての事業所について算出した額の合計額を用いることとされました。
 例えば、A株式会社とB株式会社に雇用されている者について、A株式会社で勤務中の被災で負傷した場合でも、災害が発生したA社での賃金額と、非災害発生事業所であるB社の賃金額を合算した額に基づいて給付基礎日額を算出します。

 また、特別年金や特別一時金の基礎となる「算定基礎日額」についても、同様の取り扱いとなります。

 給付の対象となる災害についても、新たな労災認定の仕組みがあります。
 それは、複数事業労働者が雇用される事業所のうち、1つの事業所での業務上の負荷(労働時間やストレス等)を評価して業務災害に当たらない場合でも、複数の事業場の業務上の負荷を総合的に評価して、労災認定できるか否かを判断するというものです。(これを「負荷の総合的評価」といいます。)
 
 負荷の総合的評価によって労災認定された災害を「複数業務要因災害」といい、脳・心臓疾患や精神障害などが対象となります。
 例えば、脳血管疾患について長時間労働での負荷を評価する場合に、2つの事業場での発症前1か月の時間外勤務がそれぞれ55時間、45時間であるとき、個別に評価すれば発症前1か月の状況としては業務と発症との関連性が強いとまでは評価できませんが、あわせて総合的に評価すれば、100時間となり、業務と発症との関連性が強いと評価できます。

 保険料の負担については、非災害発生事業所の賃金額を給付の基礎とすることもあり、非業務災害分として全業種一律賦課により算定する仕組みとされています。
 現在の非業務災害分の労災保険料率は全業種一律の0.6/1,000です。

 また、非災害発生事業場での賃金に基づく保険給付額については、その業種の保険料の算定基礎や、その事業所のメリット収益率の算定基礎には含めない取り扱いとなっています。
 この扱いは、疾病が複数業務要因災害として労災認定された場合の、すべての事業場の保険給付額についても同じです。